7月のTokyo Weekender(英語のフリーペーパー)に掲載された “A shut Door: ‘Japanese Hip-Hop Has Sectioned Itself Off”(「閉ざされた扉:日本のヒップホップは孤立してしまった」)

Hip-Hop and House dancer, Brooklyn Terry

がオンラインでも掲載され、予想していた以上に注目を浴びた。これがきっかけで、BBCとも話をすることができた。西洋の影響を日本というフィルターで濾して、日本人の「外国人恐怖症」と「多文化主義に対する批判」がどのように広がってきたかについて、この記事で浮き彫りにさせたいと思う。窓やドア、換気口の隙間をテープで止めても砂が入ってきてしまうような砂嵐のように、この話は避けて通れない。

書くことを通して、僕の関心はいつも、調べて、理解して、人を映し出すことであって、決して読む人の道徳心(倫理観)を動かすためではない。しかし、日本に住んでいる以上そうせざるを得ないことも確かだ。砂を全部吸い取れるような大きな掃除機じゃない、そんな感じだ。

 A Shut Door” 閉ざされた扉」は当初、東京に住む外国人でヒップホップの中心人物たちに感謝を込めて書いたものだった。彼らは自分たちの文化を代表して、全力を捧げている。彼らがシーンを作り上げるモチベーションとなっているのは、彼らを形成した音楽の本質を日本に持ち入れ、それを伝えることだと語ってくれた。インタビューをしたラッパーのShad ADCal Combs、ダンサーのBrooklyn Terryは、日本のヒップホップカルチャーから疎外されていると感じていると言う。貧困や暴行、ドラッグなどから多くを救い、権利を奪われた者に権利を与え、人種差別と闘ってきたアフリカン・アメリカンの文化が、なぜその文化で育ってきた、まさにその人たちを排除するような民営化思考になってしまったのだろう? 

レジェンドダンサー・振付師のBrooklyn Terryは、マライヤ・キャリーやウィル・スミス等のバックダンサーとしてツアーを周っていた。そのため90年代ごろから日本のこともよく知っている。10年以上日本に住んでいるが、日本の島国根性の鋭さは鈍ってこないようだ。「日本に住んでいて一番大変なのは『文化』。ダンサーとして、ダンスの世界・ダンスシーンをこの国で築き上げるのを助けてきたはずだったけれど、関わる人たちはダンスで養い、お金儲けをする・・・。日本で「ヒップホップ」と思われるイベントに行くたびに、自分は完全に部外者のような気がしてしまう。そんな気持ちになったことはなかった。」とTerryは言う。

ここでは、黒人は「こわい」と思われているようだ。だが、黒人のアーティスティックな美学は人気が(評価が)高く、儲かる商売になる。言ってみれば、地球の大気がこわれた非常時に重宝される、瓶詰の空気のようだ。日本でもアメリカのように、黒人の文化を取り入れたいが黒人自体は不要とされる(宣伝用として、黒人文化の信ぴょう性を保つために使われる以外は)。ネット動画がヒップホップを取り入れることを可能にしたこともあってか、ヒップホップの原点である人種的な意味合いが無視されてしまっている。

―――― 詩に出てくる言葉等関する説明 ―――

Invention’s mother are plumbs of color
exploding out of the darkness
Like slaves freestyling Biblical verses
to see whose God is closer,
they prearrange their heavenly spot,
knowing their story’s arc
lives outside the lines of Willie’s plot

That pulsar
that Burnell discovered
was just one of the many styles
that we rock,
back when you was
lying about Vietnam
and all those bombs you dropped

Before the atomic holocaust
you wanted to be like
your future oppressor
who would go on to be
your constitution’s author
but my masters
tis of thee
committed exaggerated rapes of Nanking

This island is just another sentence
to an American narrative
Your Manchurian government is a noose
that strangles its own people
-similar to the rope
that lynched my great-grandfather

The lie is a god
We are phony worshippers
and the act of pretending has
made us true practitioners

濃くて暗い色イコール「悪」、「黒人」というイメージが、メディアや映画、白人社会などの影響で根付いています。しかし、宇宙の暗闇から星が爆発してあらゆるものが誕生する、それは決して悪ではなく、「生命の誕生」です。すなわち、星屑はみな宇宙の闇から生まれ、原点は同じなはず。

奴隷制度の時代、読み書きや学ぶことを許されなかった黒人は、聖書で読み書きを密かに学んでいました。白人は教会へ通い、聖書を読み、説教を聞き、讃美歌を歌っていた一方、黒人たちは、競うように聖書の言葉を覚え、説教をするようになり、それが、今のヒップホップやラップのスタイルにも通ずるところがあります。神に近づこう、救いを求める、そういった気持ちは、ウィリー・リンチ*a) がスピーチしたような奴隷の扱い方、奴隷制度という恐ろしい圧力から抜け出したいという気持ちに似ています。また、現代のヒップホップも、さまざまな社会の圧力を批判・非難するものがあるという点では共通しているのではないでしょうか。

*a) ウイリアム・リンチは植民地での奴隷の扱い方について1712スピーチを行ったとされる奴隷所有者。「リンチ、リンチする」は彼の名前が由来。

パルサーの発見

パルサーとは、きわめて正確に時を刻む天体(星)で、ジョスリン・ベル・バーネル(北アイルランド出身の天体物理学者)と彼女の指導教官らにより1967年、ベトナム戦争の最中に発見されました。宇宙の黒、宇宙からの贈り物、リズミカルに刻む信号は、黒人の存在そのものとその文化にも類します。

歴史上の人種差別は、戦争の犠牲者に対する行為と同じように、権力による支配や反対する者に対する圧力によるものです。アメリカは長きにわたりベトナムで惨劇を繰り返していました。圧倒的なパワーは日本に大きな影響をもたらしました。日本もアメリカに倣い、権力を行使して人を傷つけてきました。全ての残虐な行為は暗い歴史かた変わらず続いているように見えます。何かが違うと理解しながらも、わからないふりをして正しいと思い続ける。今は戦争という形ではないですが、奴隷制度時代のように権力を行使して自己中心的に行動しているように思います。

――――

日本による東南アジア侵略と搾取は、マニフェスト・デスティニー(明白なる運命)*1の日本版であり、西洋の植民地化に対する防火壁だった。日本の占領により犠牲になった人々は首をはねられ、レイプされ、拷問にかけられた。男も女も子どもも縛られ、軍の訓練用の標的として使われた。帝国を築きたいという日本の野心が、神聖で人種的に優越しているという神話とか神からの使命のようなものを強くしていった。日本も改革をおこして世界から認められリスペクトされたかったのではないか。

*1 マニフェスト・デスティニー

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%83%BC

そう熱望する日本人の気持ちはアメリカ海軍のマシュー・ペリーとの衝突から生まれた。ペリーの船隊は1854年貿易のために、日本に開港を強要した。それまで2世紀の間、日本はオランダと中国以外の国との貿易を断っていた。アメリカが奴隷制度で血に慣れてしまったように、ちょんまげを結ったサムライの刀も血を恐れていなかったが、そんなことはペリーには関係なかった。彼は鉄砲を持っていたからだ。ペリーの申し出を断れなかった日本は、技術的に優れていた西洋と競い合い、帝国主義への執着心のスパイラルに陥っていき、アドルフ・ヒトラーと同じような物事の考え方をするようになった。

日本も人種差別の国ではないか。歴史を見ることで、そんな議論にもなる。確信を持って絶対そうだとも言い切れないが、自分の経験からして、「外人恐怖症」と「西洋メディア」が黒人に対する恐怖を煽ったのだと思う。この2つが、無知であることを促している要因だと思う。授業の中身は良く知らず、与えられた教材だけで人種差別を教える先生みたいだ。生徒は先生の話を聞き、従わなければいけない。時とともに明らかになるであろうが、きっかけや動機に挑むことなく、指示されたとおりに動いている。日本の労働人口の減少は、適応することを嫌がったために成長が停滞してしまったのが要因ではないか。日本のかたくなな体制順応的文化が若者を幻滅させたのだろう。10歳から19歳の死亡の主な原因は自殺だ。一部の若者にとって、死がファッションの流行のようになっている。残業など長時間労働をする日本の会社で働く、という定められた道を歩むのではなく、それに立ち向かうため、刺激を受けたキッズたちは、ヒップホップを「自由」あるいは変化を求める武器にしている。以前日本で、英語がしゃべれない十代の女の子に会ったが、彼女はNasOne Mic (2002)”の歌詞を全部知っていた。

文化がアクセサリーのように思われることも一般的にある。白人アメリカ人にもいるように、自分たちの特権にも気づかず、ヒップホップを何か別の目的で使うことがある。それゆえに、ヒップホップが彼らの文化の少しの隙間をも制服してしまっている。外交相手がドアをけり倒しに来ても、自分の文化の発展に向かっていけるよう、 “A Shut Door”がその助けになればと思う。日本人も、アメリカのアーティストのようにヒップホップに大いに貢献してきた。

Yellow Magic Orchestra*2は、ドイツのエレクトロニックバンド Kraftwerkに匹敵するくらい影響力があると言われている。世界的に有名なプロデューサー兼DJ KrushDJ Hondaは、シーンに新しいサウンドスケープをもたらした。Krush “Vision of Art ft. Company Flow””Meiso ft. Black Thought and Malik B (1995)”は自分のお気に入り。HondaTravelin Man ft. Yasiin Bey (Mos Def) (1998)”は 、近所のバスケのコートで、ブーンボックス(大きなラジカセ)でガンガン流していた。去年、12歳のDJ Renaが最年少のターンテーブリストとして、DMCワールドチャンピオンになった。土曜の夜の東京、渋谷のマンハッタンレコードの向いの路地に、ポータブルスピーカーを持った日本人のキッズがサイファーしている。彼らはオールドスクールとニュースクールのフローを日本語でやっている。それを見て感激した。暗い夜にラップをして彼らは何かから逃れようとしているのかもしれない。なんかバス停でフリースタイルでラップをしているオーランドのキッズみたいだ。

*2 イエロー・マジック・オーケストラ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9

Japanese translation by Ayumi Sekino. English version, here.

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